武術において「発声」はする? しない?
私の知る、日本と中国の武術における「発声」について考察してみる。
日本
日本の武術・武道は、総じて発声する流派のほうが多いように感じられる。
空手、剣道は発声する。
柳生心眼流は発声する。
古流剣術や居合は、発声するものとしないものがある。
柔道は現代では発声しない。
古流柔術は発声を含む場合が多そうだ。大東流は発声がある。
ちなみにブラジリアン柔術では、発声してはならないと明確に戒められている。
合気道は、現代においては発声しないのが一般的だが、かつては発声を含んでいたとの話もある。
日本武術においては、音と動きの対比性を重視していると考えられる。
例えば「エイ」は「鋭」であるし、「ヤー」は「矢」である。
「トォー」は「遠」「止」「投」といくつか用法がある。
中国
中国武術というとカンフー映画などでやたら声を出しているイメージがあるが、中国北派武術は実は発声が少ない。
現代長拳は「ハイ!ハイ!」と声を出すことがあるが、その源流である査拳や華拳では、私の知る限り発声はない。
内家拳(太極拳・形意拳・八卦掌)は発声しない。
その他、私が知る限りの中国北派武術は基本的に発声しないが、唯一の例外が心意六合拳である。
「イッ!」という、横に鋭く広がる「雷声」を使う。
上記もし違っていたら、お詫びして訂正いたしますので、情報をいただければ幸いです。
中国南派武術については、私が最も誤りやすい流派なので基本言及しない。
現代南拳では「ウオッ!」という特徴的な発声を行うが、これが伝統的なものかどうかはわからない。

発声とは「決断」。
最近、某政治家が「口から出たものは取り消しが効かない」と発言したそうだが、これは含蓄ある見解である。
発声は「決断」と関係がある。
発声と動作は一致しており、発声と合わない動作をすることはできない。
例えば剣道で、試合のルールでは認められないが、試しに「面!」と言いながら胴を打ってみてほしい。
ものすごくやりづらいはずだ。
おそらく、真剣を持った戦いでこんなことをやったら、まず負けるだろう。

口から出たものは、取り消しが効かない。
故に、口に出すということは、絶対にその技を完遂するという「決断」が伴っているのである。
そして、流派によってはこういう「口に出しての決断」が、流派として求めるところと合わないことがある。
そういう流派では発声をしないのであろう、と思われる。
もし発声のある流派を稽古しているのであれば、声は「絶対に技を完遂するという決断」と常に同期していることを忘れてはならない。
「そう指導されたから」「型でそうなっているから」というような「決断なき声」では、声に技を乗せることができない。
こういうのは、聴いていてすぐわかる。
よく留意して稽古してほしいものだと思う。
武研門で指導する流派で発声があるものといえば、やはり「心意六合拳」ですね。
また発声のある日本剣術も指導します。
ビシッと気合いを入れる稽古がしてみたい方、武研門の「古武術パーソナルトレーニング」をぜひお試しください!
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