某格闘技ジムにて、練習生がスパー中に死亡したとの報道があった。
亡くなられた方におかれては、心からのご冥福をお祈りいたします。
事故の詳細については、私は存じ上げない。
なので、その事故自体の論評はできない。
しかし、「こういうことはいつどこで起きてもおかしくない」とは思っていた。
その兆候は「ケガに対する認識」だ。
とある、私もいつも勉強させていただいているブラジリアン柔術のYouTubeチャンネルで、先般「ケガはあって当たり前」と取られるような動画が公開されていて、非常に残念な思いをした。
ケガ人が続出している状況に疑問を感じず、その原因を道場の運営方針ではなく門下生のほうに押し付けている時点で、私はだいぶ危ういと思っている。
あなたの道場は、ケガ人が多くないか?
まず、この点を自問してほしい。
あなたが通う道場、またはあなたが運営する道場は、ケガ人が多くないか?
何しろ武術・武道・格闘技なわけだから、全員がまったく無傷とはいかないだろう。
しかし、どうも道場に通う人が頻繁にケガをしているようだ…と感じるならば、以下のような点をもう一度自問してほしい。
👉「多少のケガはしょうがない」と思ってないか?
ケガは、もちろんあり得ることだ。
しかし、その状態を「多少のケガはしょうがない」という言葉で容認してないか?
ケガは当然、しないほうがいいに決まっている。
ケガしたら練習できない。稽古できない。万一の時に身を守れない。
つまり、弱くなる。
本当にやむを得ない原因でケガするなら仕方がないが、指導方針・道場の運営方針の悪さのせいでケガしてるなら、いったい何のための武術・武道・格闘技か?という話になる。
「最悪の事態でもケガしないで済む」ようになるのは、大事な稽古目標だ。
「ケガしないように気をつけましょう」と言うだけでは、ケガはなくならない。
「ケガしないための稽古」をしなければならない。
👉ケガしないための稽古、ケガしないようになる稽古をしているか?
「ケガしないための稽古」を中心に据えてるか?
「ケガしないようになる稽古」を積み重ねているか?
よく自問してほしい。
「不自然な練習」はケガしやすくなる。
特に「現代的トレーニング」には疑問の目を向けたほうがいい。
本当にそれで「一生」という時間軸で強くなると言えるのか、検証が不十分であることが多いからだ。
すべての現代的トレーニングを否定するわけではない。
私の目から見て、「これは良い」と思うものもあれば、「これは絶対やめたほうがいい」と思うものもある。
さらに言えば、同じトレーニングでも、やり方によって良くもなれば悪くもなる。
どうもうちの道場はケガ人が多い…と感じたら、練習内容を根本的に見直すべきだ。
武研門としては、そうしたご相談にも乗らせていただく。
👉「単なるパワハラ」を「必要な厳しさ」だと思ってないか?
「追い込み」みたいなことがよく言われる。
しかし、それは本当に必要なことなのか。
無意味に負荷をかけてないか。
そうだとしたら、それはもう「単なるパワハラ」である。
自分の「際」は、自分だけが知ることができる。
指導者は、門下生が「自分で自分の際を観に行く」ことができるようになるよう指導しなければならない。
👉「試合に勝つこと」が主目的になってないか?
試合とは「試し合い」である。
お互いの持てる力をすべて使って「試す」場だ。
手加減したら「試し」にならない。だから真剣勝負だ。
だが、あくまでも「試し合い」だ。
「その先の人生」のために試し合いをするのであって、試合に命を賭けるようなやり方はあってはならない。
ただ、プロ格闘家の場合は話が違ってくる。
プロ格闘家は試合によって人生を作り上げる生き方を選んだ方々であり、試合に勝つことがイコール生きることとなる。
私としては、そのような生き方をする方々に大いなるリスペクトを寄せる一方で、そうした方々を「従軍看護師」のような気持ちで心配している。
コロッセオに行かなければ治療の必要はないのに…と思いながらも、コロッセオに向かう剣闘士がいるのだから仕方がない。
こうした方々が少しでもケガを減らすための指導も可能なので、ぜひ相談してほしい。
しかし、プロではない人がプロのような姿勢で練習に臨むのは、大きな誤りである。
道場主は、この峻別ができているかどうかを今一度自問していただきたい。
プロがプロではない人を下に見るような態度はあってはならないし、ましてや、プロではない人にプロのような練習を求めるのは論外である。
👉焦ってないか?
ここは要注意である。
いついつまでに成果を出さなければならない、次の試合は絶対勝たなければならない、何歳までに優勝しなければならない…
こうした焦りは、まさしくケガの元である。
身体という「我ならぬ我」は、そういう「自己都合」には合わせてくれない。
人生という長い時間を使って、身体という「我ならぬ我」を知っていくことが「常に成長し続ける自分」を作っていく方法である。
いかがでしょうか?
耳の痛い話かもしれない。「うるせーよ」と思う方もいるかもしれない。
どの道場も経営は大変だろう。
しかし、本来めざすべき姿を試合に勝つために見失うのでは、武術・武道・格闘技の未来はない。
みんなが「続けていてよかった」と思える武術・武道・格闘技の実現のため、武研門は貢献を惜しまないつもりだ。
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