人体随一の謎関節「肩」

柔術の基礎知識だが、キムラ系関節技(相手の肘を曲げさせて背中側に回し、肩を極める技)の際、相手の肘を「ピッタリ90度」にしないと極まらない。

より広角だと逃げられやすくなるのはわかりやすいが、より鋭角でも逃げられるのだ。
「ピッタリ90度」のときだけ極まるという、肩関節の不思議さを感じさせる技だ。

V1系関節技(相手の肘を曲げさせ、肘を前方に捻って肩を極める技)の場合は、90度だと逃げられる。
もっと鋭角に曲げる必要がある。

まったくもって、「肩」は謎すぎる関節だ😅

「肩」を考察するにあたって、おもしろい記事があった。

哺乳類は肩甲骨から動いている

哺乳類の進化過程を魚までさかのぼると、前足に相当する胸ヒレは頭蓋骨とつながっています。

両生類、爬虫類になると前足は頭部から分離し、肩甲骨のような骨が出来て多少自由度が増しますが、背骨とつながっているため独立して動かすことができません。そのため手足を体幹部と同時に左右に動かして移動します。

哺乳類になると肩甲骨が背骨から分離し、体幹を地面から大きく浮かせ背骨を上下に動かすことが出来たことで速く走ることが可能になりました。

「ヒレ→前足→腕」と進化する過程で、「肩」は独立性を高めていったということがわかる。

哺乳類は肩甲骨を背骨から分離させることで、前肢を背骨の動きと独立して動かせるようになった。

さらに哺乳類の中でも、樹上生活に適応したサルの仲間は、肩ごと前肢を、肘を伸ばしたまま真上に上げることができるようになった。
この能力を保持したまま、地上二足歩行になったのが人類だ。

肩関節はこうした入り組んだ進化の結果、複雑な「謎関節」となった。
故に、自由度が高い一方で痛めやすく脱臼しやすく、肩こりや四十肩・五十肩にもなりやすいという、非常に「気難しい」関節になっている。

「肩をいかに正しく捉えるか」は、武術において欠くべからざる要求である。

例えば形意拳の起式で、手を下から上に上げ、中心でまた降ろしてくる動作があるが、この肩関節の気難しさを捉えていれば、降ろしてくるとき肘の角度が悪いと、「肩が引っかかる」ことがわかる。

こういうことも、感度が悪いと流してしまう。
多角的な稽古が必要となる所以である。

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