「ジェロム・レ・バンナ」と言えば、K-1黄金期の主役の一人として、私の世代としては鮮烈な印象が残っている方も多かろう。
そのジェロム・レ・バンナが1回1分半でKOされたというのは、残念ではあるが、「やはり…」という印象も拭えない。
バンナは51歳。私と同年代だ。
「歳を取るとやはり戦えなくなるのか?」
という疑問はいつも提示される。
私としては「そんなことはない」と言いたいのだが、いかなる生物も寿命には勝てない。
歳を取ると何を失い、何なら失わないのか。
この点は明らかにしておく必要がある。
件のバンナ・K-Jee戦を見ると、「ああ、バンナ動けてないな…」とまず思う。
これは、ブランクの長さによる試合勘の鈍りが大きいと思う。
ラッシュをかけてきたK-Jeeに対して、ただガードを固めてまっすぐ下がり、注文通りの右ハイキックを喰らってしまった。
これでは厳しい。
試合に出るなら、それなりの準備期間が必要だ…という当たり前の話ではある。
過去にやれたから、では通用しなかろう。
現在のバンナも、決定力はまだ持っている。
得意の技が入れば、おそらく一発で決まるだろう。
しかし、それだけでは勝てない。
「試合勘」の構成要素のひとつと言えるかもしれないが、「反応速度」。
これは悲しいかな、年齢とともに衰える。
しかもそれに気づきにくいのが厄介だ。
昨年、私は地元のスポーツ協会の指導者研修会に参加し、初めて「フロアボール」に挑戦した。
体育館で行えるホッケーのような競技だ。
スポーツ協会の委員・役員の中では私は若手のほう^^;なので、「フェイスオフ」(バスケでいうジャンプボール)は毎回私の担当となった。
僭越ながら長年武術を磨いてきた身である。
フェイスオフは100%、私がボールを奪った。
すると、相手チームはフェイスオフに20代くらいの若い選手を出してきた。
(…おい、これガチの選手じゃないのか)
と思ったが、若者相手だろうと負けはしないぜ。
…つもりだったのだが、若い選手相手だと、互角か、何度かボールを奪われてしまった。
「どういうことだ…?」
終了後に考察し、どうも「反応速度」で負けているようだ、と認めざるを得なかった。
「目で見て」「反応する」反応速度は、加齢とともに衰える。
歳をとっても戦えるようにするためには、まず「反応する」ことをやめなくてはならない。
近代スポーツ・格闘技は、最初の「機(気・起)」を他者頼みにしてしまう。
フェイスオフ然り、ゴング然り、第三者がホイッスルを鳴らす。
この場合、どうしてもそのホイッスルに「反応」する以外にない。
しかし、相撲はそうではない。
行司は「はっけよい(発揮揚々、八卦良い、発気用意…)」と準備を促すのみで、始まるのは、二人の力士の、内気への呼応が合致した瞬間である。
「反応」は衰える。
しかし、「呼応」は衰えない。
歳をとっても戦えるようにする必要条件のひとつ。
「反応に頼ることをやめ、呼応の力を磨かなくてはならない」
まず、この違いがわかる必要がある。
歳をとっても戦えるようにするためには、できるだけ早いうちに「反応」をやめ、「呼応」によって動く習慣をつけなければならない。
「呼応」を磨くにも時間がかかるのだ。
しかし、「反応」と「呼応」の違いを学べる場所もほとんどない。
ひとつはやはり、光岡英稔先生の兵法武学研究会が間違いのないところだ。
私の武研門でも、ご要望に応じてそうした稽古を提供する。
ご興味がありましたら、ぜひご連絡ください😊